打って、守って、恋して。


やまぎんの先発をつとめるのは、予選でも何度か投げていたピッチャーだった。
サウスポーの彼を先発に当てたのは、相手チームの打線が左打ちが多いというのが一番の要因のようだ。

野球を知ることで驚いたことのうちのひとつに、この「左打ち」というものがある。
ど素人の私は右利きの人は右打ち、左利きの人は左打ちと決めてかかっていたのだが、スポーツをするにおいて“左”というのは何かと重宝されたり有利に試合運びができるることが多い。
それを踏まえて、右利きの人でも左打ちをするというのだから野球選手はすごい。

これまで流し読みをしていた藤澤さんのデータを改めて見てみたら、左投げ左打ち。彼は正真正銘の左利きのようだが、これまでに左投げの二塁手で成功した人はプロでもほとんどいないらしい。


今日も藤澤さんは二番、セカンド。
私がこれまで見た試合でこれ以外の打順、ポジションは見たことがない。


「始まるよ」と、凛子が言ったのを合図にしたように、ついに決勝戦が始まった。
決戦の幕は、相手チームのピッチャーの第一投で切って落とされた。

奇妙な静けさの中に、主審の「ストライク!」のコール。たった一球ストライクをとっただけであちらの応援団がメガホンを打ち鳴らした。

なるほど、決勝ともなると一球一球にお互いの応援団が反応し、さらに熱が入るというわけだ。


二番打者の藤澤さんがすでにネクストバッターズサークルに待機しており、バットを左手に持った状態で戦況を静観している。

─────あぁ、もう。この姿だけで胸がいちいちうるさく鳴り出すとか。私、かなりヤバいかも。