お酒の影響もあってさらに饒舌になった沙夜さんに乗せられて、私もなんとか会話に食らいつく。
おしゃべりな沙夜さんと渡り合う栗原さんも、どうやら話すのが好きなようだ。
気が合っているみたいなので、呼んだのが沙夜さんでよかったと安心した。

二人は息つく間もなく話を続けている。

「イケメンだからモテるでしょ?プロ入りしたら女子アナとかモデルとか寄ってきそう〜!」

「モテないですよ。ユニフォーム脱いだら誰も気づきませんって」

「いや、これだけ身長高かったら目立つよ!あれ?そもそもプロに行く気ある?」

「そりゃあ、手を挙げてくださるところがあれば行きたいですね。子供の頃からの夢ですから」


そういえば凛子の話によると、栗原さんのことはもうすでにいくつかの球団のスカウトマンが目をつけていて、来年にはプロに行ってしまうということだった。
それは彼の耳にもきっと届いているだろうから、夢はすぐそこというわけだ。

野球を続けているということは、プロに行けるものなら行きたいのかな。

ふと隣に座る藤澤さんを見やるが、彼は黙々と料理を食べ、ビールを飲んでいる。
寡黙というより、何を話せばいいか分からない感じ。


すると、沙夜さんと話していた栗原さんが、にっこりと笑って藤澤さんに目を向けた。

「でもね、やまぎんで俺が気持ちよく投げていられるのは、フジさんのおかげみたいなものなんですよ」

「え?俺?」

いきなり自分の話題になったことに面食らっている様子の藤澤さんが、目をぱちぱちと瞬かせて首をかしげる。

「俺は別になにも…」

「いやいや!石森さんなら分かるでしょう?フジさんの守備のすごさ!」

「あっ、は、はい!私もまだ野球のルールを勉強して一ヶ月しか経ってませんが!それは分かります!」