お茶を出したあとは興奮しきった二人が押し問答を繰り返している。
「藤澤さん……あとでサインもらってもいいっすか?」
「あっ、俺にも!名前入りでお願いします」
「ずるいっすよ淡口さん!」
「何言ってんだ、毎日俺はあの乳酸菌飲料のんでるぞ」
「関係ないっすよね!?」
「二人とも邪魔!」
キッパリとした声で一喝した沙夜さんが、淡口さんたちをつまみ出すようにしてぽいっと応接スペースから追い出してくれた。
「ゆっくりできないだろうけど、ごゆっくり〜」と沙夜さんたちが離れてくれたところで、私はやっとホッとして小声で旭くんに話しかけた。
「ごめんね、騒がしくて」
「ううん。俺こそ急にごめん」
「いつ帰ってきたの?連絡くらいしてよ」
「朝早くにあっちを出たんだ。まっすぐ柑奈の会社に寄ったの。ちょうどお昼休憩くらいかなと思って」
「まだあと少し時間あるよ。……このままだと営業さんたちも帰ってくるからサインとか写真とか一気に要求されるよ」
「それは全然構わないよ。……あぁ、でも柑奈とゆっくり話せないか」
車に移動する?と旭くんがゴソゴソと車の鍵を探しているようなので、いったいなんなのかと息をつく。
「そんなに急ぎの用事なら、電話くれればよかったのに」
「…うーん、ほら、一応顔を見て話したかったから」
「え?なに?」



