「ここ最近は大会が立て続けにありましたけど、次は十一月でしたっけ?」
お土産は大切に紙袋に戻して、それを私のバッグのそばに置いておいた。
飲みかけのビールを空にしつつ、そういえばと試合日程を頭に思い浮かべる。
藤澤さんは箸を止めてちょっと考えるように目をそらしたあと、いえ、と首を振った。
「北海道予選は今月末です。全国大会が十一月なので、進出すれば一ヶ月くらい空くかな。もしかしたらその間にいくつか練習試合か組み込まれるかもしれないですけど」
「今月末!?……なんか、ほんと休みなしで野球してますよね」
「試合は好きなので、全然嫌じゃないです。むしろ大歓迎。そのために練習してるので」
「そうなんですか?あんなに緊張感がビリビリしていても?疲れませんか?メンタルやられませんか?」
あまりにも食いついて前のめりに聞いてくるからか、藤澤さんはおかしそうに肩を震わせ、目を細めている。
彼の試合を見に実際に足を運んだ時も、テレビ越しに応援していた時も、どちらもそうだがピンチやチャンスでのあの緊張感は凄まじい。
応援側がそう感じているのだから、グラウンドでプレーしている彼はもっともっと押し潰されるくらい感じているはずなのだ。
それなのにどうして笑えるのか不思議でならない。
「大事な場面で緊張するなら、しないくらい練習すればいいだけのことです。緊張はミスに繋がりますから」
彼がさらりと言ってのけた言葉は、思っていたよりも重かった。あくまでも本人はライトな言い方だったけれど、その根底には並々ならぬ努力が存在している。
練習の積み重ねでここまで来たのは分かっていたつもりだったが、地道な練習があってこその彼の活躍があるのだ。
ぬるま湯に浸かっている私とは、やはり住む世界が違いすぎる。



