「ただいま」
その言葉も、魔の言葉。
午後3時、少し雨の降りそうな空を見上げながらドアを開ける。
ふと左を見ると起こしてある写真たて。
私はため息をつきながら、それを伏せた。
「あら永和ちゃん、お帰りなさーい!」
「…はい」
リビングに入り、鬱陶しそうに制服を脱ぐ私にその人は言う。
「由良(ゆら)はまだ帰ってないのよね、ごめんなさいね〜」
毎日の日課になりつつあるその会話にまた少し、ため息が漏れた。
「そうですか、すいません」
私は一言そう呟くと上下ジャージに着替えてソファに座る。
「今日の晩御飯はね〜、ってああ、スーパー行ったかしら」

