「でも失敗しないこともすげえ怖いことだよ」
先生が、諭すように言った。
私はぎゅっと、非常階段の手すりを握りしめる。
――『的井さんって、なんか変だよね』
みんなの前で失敗して笑われて、私は自信を失った。
変だって、陰口を言われたことよりも、みんなと同じようにできないことが悔しかった。
「……先生は失敗したことってありますか?」
「当たり前だろ」
「笑われたり、人が離れていったこともありますか?」
「うん。小学校、中学校、高校、大学、社会人になってもあるよ。聞きたい?いっぱいありすぎて長くなるけど」
先生はそのあと、本当に色々な失敗談を話してくれた。
小学校の遠足でひとりだけバスに置いていかれたことや、中学校の全校集会でしゃっくりが止まらなくなったこと。
高校の保健室で寝ていたら存在に気づかれずに夜になってたことも。
大学生も社会人になってからも先生は失敗ばかりで正直、話してくれた内容はぜんぶカッコ悪かった。
でも、それを笑って話せる先生はカッコいいと思った。
「的井。失敗して立ち止まったら、それは本当に失敗したという結果だけで終わる。大切なのは、失敗しても立ち上がり続けることだよ」
私はやっぱり一か八かという言葉は好きじゃない。
けれどひとつだけ数字を変えて、七転び八起きにしたらどうだろう。
立ち上がり続ければ、笑われたことも笑って話せる日がくるかもしれない。今日の先生みたいに。



