「ごめんね。みんな悪気があるわけじゃないんだ」
「……い、いえ。私が急に教室を訪ねたりしたのがいけなかったんです」
「俺は嬉しかったよ。ちょっとビックリしたけどね」
先輩は柔らかい顔で微笑んだ。
……本当にいい人。誰とでも分け隔てなく接して、こんな私にも親切にしてくれる先輩は他にいない。
「そういえば、的井さんって普段は昼飯どこで食べてるの?」
「え、お昼ですか……?」
「うん。俺、毎日食堂に行ってるんだけど、的井さんのことは見たことないなってずっと気になってたんだよね」
たしかに食堂は一度も利用したことがない。
受験の時の学校説明会の時に食堂も案内されて、学食はなんと80種類のメニューがあり定食でも500円は越えないと言っていた気がする。
「いつもはお弁当を持参してます。でも今日は作れなくて……」
通学路の途中にあったコンビニにも寄る暇がなかった。
「じゃあ、昼になったら一緒に買いにいく?」
「……え?」
予想外の展開に、またおかしな汗をかいてきた。
「だ、大丈夫です。それに人混みは好きじゃなくて……」
「食堂の中に入らなくても購買のパンなら並ばずに買えるよ」
……パン。それだったらハードルが低いかもしれないけど……。
「俺も今日はパン買うし、一緒に行こう」
先輩の親切を無下にもできずに、結局私は昼休みにパンを買いに行くことになってしまった。



