先生と17歳のあいだ




遅刻はなんとか免(まぬが)れた。ただし本当にギリギリ。

クラスメイトたちは全員席に着いていて、先生も教壇に立った瞬間だったので、かなり注目を浴びてしまった。



「お前が教室に駆け込んでくるなんて珍しいな」


ホームルームが終わってすぐに郁巳先生が私に近づいてきた。


考えてみれば朝寝坊をしたのは今回が初めて。誰のせいでこんなことに……。

いや、先生のせいじゃない。遅刻しそうになったのは全部私が悪い。



「しかも寝癖ついてるし」


「や、やめてください」


先生の手が伸びてきて、私は不自然に避けてしまった。すると、それを見ていたクラスメイトたちが笑いながら茶化しにきた。




「うわ、いくみん、的井さんにセクハラしてんの?」

「拒否られてるいくみん写メ撮っておくねー」 



一気に騒がしくなる教室。私の机の周りに人が集まってきて何故かここで雑談がはじまった。



「ってかいくみん、昨日のライン無視したっしょ?」

「カラオケに行くって約束忘れてないよね?」


そんなやり取りに耐えられずに私は席を立つ。



先生から声をかけてきたのに、私が教室を出ていっても先生は私のほうを見なかった。


先生にとって私は30人いるクラスメイトのひとりなのだから平等に接するのは当然のこと。



なのにみんなから慕われている先生を見て、なんで一瞬でも私は……〝取られた〟なんて思ってしまったのだろうか。