「遅いし家まで送ろうか?」
「……え?」
私の思考は一瞬停止する。
先生とは話したいけれど、車には乗れない。
「だ、大丈夫です。すぐそこですから」
そう断ると、先生はあっさりと「じゃあ、リレーの練習だと思って走って帰れよ」と運転席のドアを開けた。
「さ、さようなら」
先生が走り去る前に、私はパーキングを離れる。
ププッとクラクションが鳴ったあと、後ろを振り返ると先生の車はもう夜の中に消えていた。
先生の車に乗れなかったのは、私の気持ちの問題。
今日はなんだか心がふわふわと浮いているから、このまま先生の車に乗ったらどうなってしまうんだろうと怖くなった。
大丈夫。疲れてるだけ。
私はそう自分に言い聞かせながら家に戻った。



