先生と17歳のあいだ




「へ、部屋にいたの?」

「うん」

「ご飯は食べた?」

「……うん」



食べていないけれど、食べたことにした。

同僚とお酒を飲んできたということは、おそらくお母さんは軽い食事くらいはしてきたはず。


そういう時は連絡くらいしてくれたらいいのに、私のスマホには一件のメールすら届いていない。



主婦業をほとんどしないお母さんにストレスが溜まるお父さんの気持ちは分かる。

でも、なにもしてあげたくないと思わせるぐらいの振る舞いをしてきたお父さんも悪い。



どうして私が子供の頃は、あんなに家族が円満だったんだろう。


仕事が忙しくなって時間に余裕がなくなったことが原因かもしれないし、どちらかに新しい人ができたことで気持ちが離れていったことが原因かもしれないし、決定的な理由なんてこの先も分かることはないのだと思う。



色々なことの積み重ね。

こういう時に決まって出てくる常套句(じょうとうく)だけど、それが一番しっくりくる気がする。



「ごめん。ちょっと疲れたからシャワー浴びてもう寝るね」
 

お母さんは険しい顔のまま脱衣場へと向かう。



「うん。分かった」


淡々と返事をしたあと、自分の意思とは関係なく「ぐう……」と、お腹の虫が鳴っていた。


空腹感はないけれど、身体が食べ物を欲している。


お母さんに嘘をついてしまった以上なにかを作るわけにもいかないし、なんとなく今は家にいたくない。


私は考えた末にお財布だけを自分の部屋に取りに戻った。そのあとシャワーの音が鳴り響く浴室を横目に玄関のドアを開けて外に出た。