「えーなにそれ、ウケる!」
「なんか前に元彼が同じように時計をパーカーの上にしてたんだけどそれはマジでダサかった。でも、いくみんは不思議とダサくないんだよねー」
「分かる!ルックスって本当に大事!」
女子がケラケラと騒ぐ中で、先生は「もうすぐチャイム鳴るから急げよ」と、職員室があるほうへと歩いていった。
「あ、俺もそろそろ戻らなきゃ」
和谷先輩も左腕にしてる腕時計を確認する。もちろん時計は制服の下。
先生はああやって引き止められれば足を止めるし、質問されればすぐに答える。
生徒たちからの誘いもなるべく断らないようにしてるし、バスケ部の人数が足りないと急遽練習試合に参加していた時も、金曜日のドッジボールだってそう。
放課後に洋服を汚してまで遊んでくれる先生なんていない。だから、あんなにも机の上に仕事が溜まっているんだと思う。
「じゃあね」
先輩が歩き出したところで、私は「あっ……」と呼びかける。
さっきの質問にまだ答えてなかった。
「楽しいです。学校は好きじゃないけど、郁巳先生は楽しくて面白いです」
そう先輩に言ったあと、私も移動教室へと向かった。



