「先生。今も同じ10歳差です。二十歳の私とは恋愛できますか?」


言いながら、一筋の涙が頬を伝った。



先生は迷わずに私を抱きしめた。


最後の教室で感じた先生の温もりよりも、ずっとずっと熱かった。



「……先生、先生……っ」

私は先生の胸に顔を埋める。



「もうお前の先生じゃないよ」

「……じゃあ、なんて呼んだらいいですか?」  

「これから一緒に考えていけばいいじゃん」



これからがあるんですか。 

一緒にいてもいいんですか。


先生は相変わらず自分勝手で、なんでもひとりで決めてしまうから私はそのたびに振り回されてしまう。


でも、私は先生がこんなにも好きだ。


会えなかった間も先生のことが片時も頭から離れなかった。


心は全部、あの日から先生だけのものだった。




「的井、俺はお前のことが好きだ」


先生がまっすぐに私のことを見た。




「これから先、ずっと俺の隣にいてくれる?」


私はその言葉に、何度も何度も涙を拭く。



私は先生と生きていきたい。


10年でも20年でも30年でも。

いつか生徒と先生だった頃の話を懐かしくしながら。




「はい……っ」



麗らかな春。

先生と出逢った季節の中で、私たちは優しいキスを重ねた。