「答辞、とっても素敵でした」
「本当?今までにないぐらい緊張しちゃったけどね」
卒業の日を迎えた先輩はいつもより静観な顔立ちをしていた。
「先輩、これ」
私は一輪のカーネーションを差し出す。
これは在校生が卒業生に渡すために用意されたもの。
本当は花道を歩いてきた時に順番に渡さなければいけなかったけれど、私はどうしてもこの花を先輩にあげたかった。
「カーネーションの花言葉は尊敬です。先輩はいつも私のことを助けてくれて励ましてくれました。本当にありがとうございました」
年齢はひとつしか変わらなかったけれど、先輩はとても大人だった。
こんな人になりたいと、こんな人になろうと、初めて心から尊敬できる人だった。
「じゃあ、俺もこれを」
先輩が胸に付けていた花を取る。
それは卒業生全員が付けていたガーベラの生花だった。
「ガーベラの花言葉は知ってる?」
「いえ」
「つねに前進。的井さんにぴったりだね」
ガーベラの花を先輩から受け取ると、笑顔で見送るはずの私のほうが泣いてしまった。
「的井さん、俺のほうこそありがとう」
先輩は最後まで優しくて、紳士的で、カッコよく学校を卒業していった。



