「すごい、ですか?」


「正直、教師っていうだけで生徒には偉そうにできちゃうし、ああだこうだって持論も押し付けることができる。だから俺が言ったことがすべて正しかったわけじゃなかったと思う」


「………」


「でもお前は、不満そうにしながらも俺が言ったことを一生懸命やってた。不器用な時もあった。焦れったい時もあった。だけどお前のほうこそ俺とよく向き合ってくれたと思ってる」



月明かりに照された先生が、まっすぐに私のことを見ていた。そして……。



「教師らしくない俺の言葉を懸命に聞いて、どんどん背筋が伸びていく的井を見て、俺は心底この職業を選んでよかったと思えたんだよ」


先生があまりに優しく笑うから、自然と涙が溢れてきた。




「的井。間違ってもいいんだ。正しくなくても。それでもお前はきっと自分なりに道を選んで進んでく。それができるヤツだと俺は思ってるから」


先生は指先で私の涙を拭いてくれた。
    


海は繋がっている。

空も繋がっている。

先生とも、繋がっている。
  

もう、怖がる必要なんてない。




「先生。私、北海道に行きます」


どうなるかなんて分からない。

でも、先が分かりきってることもつまらない。


それも、先生が教えてくれたことだから。