……正直私は、郁巳先生のことが苦手だ。


本当は去年みたいにベテランな先生が担任になってほしかったし、こうやって生徒の身体測定に混ざって自分も測ってもらってるなんて、大人としてなにを考えてるんだろうと呆れてしまう。



「ほら、次のクラスが来たから視力に移動」

「はーい!」


それでも反抗ばかりの生徒も郁巳先生の言葉になら素直に従う。


先生を先頭にぞろぞろとアヒルの群れみたいに移動するクラスメイトたち。私はもちろん一緒に群れることはなく、離れた場所でわざと歩くスピードを遅くしていた。


はあ……と、深いため息をついた瞬間、頭ひとつ飛び出ている先生と目が合った。



見た目は若くて先生らしくないのに、視線だけは浮いている私をすぐに見つける。


隙を見せれば話しかけられると思った私はすぐに瞳を逸らした。


……やっぱり嫌いだ。


郁巳先生のことも、こういう学校行事も、ひとりを好んでいるくせに堂々とできない自分のことも。