「私、郁巳先生に告白しました」



〝片想いは自分が止めない限りずっと続けていられる。だから告白してはっきりとフラれる必要がある〟


先輩のあの言葉がなかったから、私は先生に想いを打ち明けることはなかったと思う。



「結果はダメでした。でも、気持ちはすごく軽くなりました」


臆病な私の背中を押してくれた先輩だからこそ、この報告は一番にしなきゃいけないと思ってた。



「でも、俺を選ぶわけでもない。でしょ?」


先輩が切なそうに眉を下げる。私がこくりと頷くと先輩は項垂(うなだ)れるようにしてベンチに寄りかかった。



「フラれても先生のことは頑張るの?」
 

「頑張るというか……私の気が済むまで片想いは続くと思います」


先生はそれを許してくれた。だから気持ちがスッキリしても想いは消えてはいない。



「俺ね、前に聞かれた時には言わなかったけど、的井さんのことが気になった大きな理由があってさ」


「……なんですか?」 
 

「前に郁巳先生が担任だと楽しそうだよねって聞いた時、的井さんなんて答えたか覚えてる?」    


「い、いえ」


「『学校は好きじゃないけど、郁巳先生は楽しくて面白いです』って言ったんだよ」


……そんなことを。全然覚えてない。