「和谷先輩のことはどう思ってるの?」


「……いい人だと思う。私には勿体ないくらい」


先輩はあのあと強引に結論付けるのではなく、私の気持ちが決まるまで待っていてくれると言った。


現時点の私は先生のことしか考えていないし、先輩を恋愛対象にすること難しいことも告げたけれど、それでもいいと。

先輩は私に叶わない恋はしてほしくないと、繰り返し言ってくれた。




「私さ、恋愛って雛鳥の習性に似てる部分があると思ってるんだよね」


「え……?」


「ほら、最初に見たものを親と勘違いしちゃうっていうやつ。恋愛も同じように最初に優しくしてくれた人とか手を差し伸べてくれた人のことを気になっちゃうのは当然っていうか、それが恋なんじゃないかって錯覚することもあると思うんだよね」


たしかに私は先生と出逢うまで男の人とふたりきりで話したこともなかった。



「あ、だからって六花の気持ちが錯覚だなんて言ってるわけじゃないよ?」


「うん。分かってる」


「でもいくみんだけって思ってる視野を少し広げてみたらなにか見えてくるものがあるんじゃないかなって」



もし、最初に友達になろうと言ってくれた人が先生じゃなくて和谷先輩だったら?


私が先生に抱いている気持ちと同じように、先輩のことを好きになっていたのかな……。