先輩はおそらく。いや、きっと私の気持ちに勘づいていたのだと思う。


先生に恋をしてはいけない。

それは十分分かっているけれど、もう心のブレーキも効かなくなってきている。




「はい、好きです」


先輩の真剣な瞳を見て、誤魔化したりはできないと思った。



「付き合いたいと思ってるの?」
   

「……そこまでは考えたことはありません」


「郁巳先生は的井さんの担任だよ。10歳も上の人だよ」


「分かってます」


そう言い返すと、ふわりと私の身体が空中に浮いた。  
 



「なんで郁巳先生なの?俺じゃダメなの?」
 

気づくと先輩は私のことを抱きしめていた。それは痛いくらい強く。

 

「俺は的井さんに叶わない恋なんてしてほしくない。だから俺にしてよ。少しずつ好きになってもらえるように俺も頑張るから」


先輩の声が震えていた。



またどこかで花火の音がしてる。


パンッパンッと、弾けるような音はこの胸の痛みに似てる気がした。