「でも、お前のそういう目まぐるしい変化のスピードに付いていけない時もあるよ」
先生はタバコを吸いながら少しだけ寂しそうな顔をした。
「私は先生を置いていかないですよ」
「ふっ、お前なんてあっという間に俺を追い抜いていくよ」
「……先生って本当は寂しい人なんですか?」
「大人は孤独と引き換えに自由を手に入れるもんなんだよ」
ほら、そうやって誤魔化す。
「頭ぐらい撫でてあげてもいいですよ」と、私が手を伸ばすと先生はすかさずそれを止めた。
「お前、同級生の男にこれしたら一発で勘違いされるから気を付けろよ?」
そう言って逆に頭を撫でられてしまったのは、私のほう。
じゃあ、私は勘違いしないとでも?
恋を知らなかった私に恋を覚えさせたのは先生なのに……。
1パーセントも可能性を疑わないなんて、ちょっと私のこと甘く見すぎじゃないですか?
「……先生、私」
唇が次の言葉を言いたがっている。けれどそれを阻むようにして非常階段の扉が勢いよく開いた。
心臓がドキッと跳ねて、私は自然と先生から距離を置く。
「……な、なんで」
そこに立っていたのは、和谷先輩だった。



