「……あんまり目立たないでください」
私がぽつりと呟くと、先生は驚いたように瞳を丸くさせた。
「なんだよ。しおらしいこと言っちゃって」
だって先生を独り占めすることはできないから。だから、少しでも先生の魅力が他の人に伝わらなければいいのにって思ってしまうだけ。
普段は静かな非常階段も、今日は文化祭の騒がしさがここまで聞こえてきて、なにやらパンッという花火の音も響いている。
もしかしたら中庭でイベントが始まるのかもしれない。
「そろそろ戻れよ」
「……先生は?」
「これだけ吸ったらいく」
先生は長さが半分になったタバコを私に見せた。
先生と会える非常階段は私にとって特別で。必然的に『友達になってやろうか?』と言われた時のことを思い出す。
あの時、先生と関わらない選択をしていたらどうなっていたんだろう。
私は今日の文化祭もひとりきりで過ごしていたのかな。
「先生、私、ちゃんといい方向に変われていますか?」
「うん。お前は俺が思うよりずっとずっと頑張ってるし、この場所でひとり寂しく弁当を突っついていたことが嘘みたいだよ」
思えば私は委員会も体育祭も友達関係も、全部先生に認めてもらいたいという想いが原動力になっていた気もする。



