「んー大きいことは特にないけど、しいて挙げるならこの前道端で初恋の人に遭遇したってことぐらいかな」


「え?」


「って言っても中学の時だからもう15年くらい前のことだけど。向こうが子供三人連れててビビったけど、考えてみれば27で不思議なことじゃねーよなって冷静になった」


そう言って先生は笑みを浮かべていた。



「話したんですか?」


「いや、あっちは俺に気づかなかったみたい。まじで時間の流れって早いなって思ったよ。おてんばな女の子だったのにすっかり親の顔になっててさ」


「……美人さんですか?」


「うーん。まあ、初恋は美化するもんだけど普通に可愛いお母さんって感じだったよ」



きっと先生はほろ苦い恋とか甘酸っぱい思い出とか10代の多感な時期にたくさん経験してきたのだと思う。そういう頃の先生を、一目でいいから見たかった気もする。




「先生に初恋の人がいるなら、もしかしたら他の誰かは先生が初恋相手って人もいるでしょうね」


「どうかな。俺はいつも二番手、三番手って感じだったから」



でも、私は一番です、なんて言ったらどんな反応をするかな。



私は先生が初恋です、なんて言ったら……やっぱり困らせてしまうだろうか。