「大丈夫。俺がいるところまではたかが150センチくらいだから」


「え、ちょ、ちょっと待ってください」



先生は冗談ではなく真面目に言ってる。

つまり頭を整理すると、私がこの場所から安全な先生の元まで助走なしで跳べってことだよね?




「すいません。無理です。私、立ち幅跳びって昔から苦手なんです」


小学校、中学校と体力テストでやったことがあるけれど、いつも砂場にしりもちを付いて散々な結果になっていた。

 

「それはお前がおそるおそる跳んでるからだって。いいか?スクワットするように軽くしゃがんで、そのまま両手を振って両足で踏み切る。な?」


「なって言われても……」



成功するビジョンがまったく浮かんでこない。

ワックスの上に転んでしまうぐらいなら、このまま一時間待ったほうがいいのではないかと思っていると、先生はまっすぐに私の名前を呼んだ。




「的井。俺が受け止めてやるから来い」
 

先生はそう言って両手を広げた。