「お、どこにあったの?前にどこかになくしちゃって探しても見つからないから同じものを買ったんだよ」
先生はそう言ってポケットから現在使っている灰皿を出す。
丸くて銀色に輝く灰皿は本当にオシャレな懐中時計みたいで、カチッとフタを開けば小物入れにもなりそうな形だった。
「……先生、これひとつください」
気づくと私はそんなことを言っていた。
「は?中身灰だらけだよ」
「それでもいいです」
「ダメ。女子高生がこんなタバコ臭いものを持ってはいけません」
先生はすぐに灰皿をふたつともポケットに閉まってしまった。
本当に灰皿が欲しかったわけじゃない。
ただ必要ないのなら、また埃を被ってしまうだけならば……先生はものを側に置いておきたいと思っただけだ。
「お前にはあとで違うものをやるよ」
「……え?」
先生の言葉でガッカリしていた気分が急に晴れやかになった。
「体育祭でも頑張ってたし、今日もこうして手伝ってくれたからさ」と、先生は再び荷物を運びはじめる。
「……あとでっていつですか?」
「うーん。明日かもしれないし10年後かもしれない。大人のあとでは長いんだよ」
「じゃあ、10年後でもいいです」
だって約束が続いていれば、その期間中ずっと先生と繋がっていられるってことでしょう?
「10年後って俺37じゃん。想像したらこわっ」
先生はまたおちゃらけた言い方をして、結局この話は終わってしまった。



