先生がチョークを走らせる音はとても心地がいい。
丁寧というわけではないけれど乱暴でもない。
教室の廊下側に座っている人が窓からの反射で見えにくくないように文字を中央から書き出すところとか、先生はちゃんと全体に配慮しながら授業をしている。
「いくみんの手って超綺麗だよね」
「分かる!私、腕フェチだからほのかに浮き出てる血管とかマジでやばい」
と、その時、近くに座っていた女子たちが小声で話しているのが聞こえてきた。
……血管はあまり意識して見たことはなかったけれど、手が綺麗なのは分かる。
それに長袖のパーカーからTシャツになったからなのか中性的で、ほどよく筋肉がついている身体も前よりはっきりと見えるようになった。
顔もよくて身長も高い先生は色々と抜けているようで実はまったく抜け目がない。
だから先生がモテることは当然だと思う。
たくさんの遊び相手がいることも……当然だと思う。
――『27歳、独身。なんの問題もない』
そう、問題なのは浮上してはチクリとしているこの胸の痛みだけ。



