「は?別にいいじゃん。普段はなんにも言わないくせに」
「口答えをするんじゃない!」
男子生徒を先頭に次から次へと服装が乱れている生徒たちを先生は止めていく。そんな中でみんなが助けを求めるようにして視線を送っていたのは……。
「いくみーん!」
そう、郁巳先生だった。
先生は面倒くさそうに「知らん」と校門を通り過ぎようとしたけれど、生徒たちが許すわけもなくで強引に腕を引っ張られていた。
「いくみんなら俺らの気持ちが分かるだろ?だっていくみんの格好のほうがだらしないじゃん!」
「おい、語弊があるぞ。これはだらしない服装じゃない。動きやすい服装だ」
「えーいくみん、あんまり動かないじゃん」
「バカ。休み時間にドッジボール付き合ってやってるだろうが」
「じゃあ、今日の休み時間もみんなでやろー」
なんだか話の主旨が変わってしまい、結局生徒たちは郁巳先生を楯にしてぞろぞろと校門を抜けていってしまった。
「……はあ。郁巳先生がいると生徒たちに示しがつかないから本当に困るわ。私たちは生徒たちのお手本にならなきゃいけないのに」
風紀委員の先生が深いため息をはいていた。それに賛同するように生徒指導の先生も立ち会っていた他の教員も同じように口を揃える。
「なんであんな人が教師になれたのかしら?できれば別の学校に移動してほしいくらいだわ」
生徒たちには評判のいい郁巳先生は、どうやら教師たちの間では評判が悪いらしい。
たしかに今のは他の先生と一緒に服装を注意しなければいけない場面だったと思う。
けれど、生徒たちはどうせ校舎の中に入ってしまえば元どおりの服装に戻す。生徒もその場限りの指導だと分かっているから、結局こんな服装点検なんてあまり意味がないようにも思えた。



