「だってほら、可愛いサンダルが置いてある」
指をさしていたのは、私のものだった。
サンダルは数年前に安く買ったもので、女の人が履いているヒールが高い靴とは全然違う。
汚れてるし、子供みたいな花がついてるし、多分それを含めての可愛いという皮肉にも聞こえた。
「何歳の子?っていうか今何人と遊んでるの?」
私が知らない学校以外の先生。聞きたくないのに、無条件に言葉は耳に届いてきてしまう。
「あんまり頑張ると身体に悪いよ」
「はいはい。分かったから。じゃあな」
「絶対にあとで埋め合わせしてよね!」
バタンと遮断するように閉まった玄関のドア。先生は鍵をかけてリビングに戻ってきた。
「盗み聞き?」
本当はカメでも見てるふりをしようと思ったのに、私の身体は不自然に壁にくっついたままだった。
「……盗み聞きしなくても聞こえます」
「ああ、あいつ声でかいからな」
先生は平然と私の横を通りすぎていく。
女の人が急に訪ねてきても、会話を聞かれても、あわや私と鉢合わせしたとしても、先生は特に動揺したりしない。
その冷静さが、少し寂しかった。



