正直、こんな展開になるなんて思ってなかった。


家でゴロゴロとしているだけの毎日で、カメの画像でも送ってくれたら少しは癒されるかもしれないと期待していたことは事実。


けれど本当は〝先生、元気ですか?〟と最初に文章を打っては消して、カメに書き直したことも否定しない。



カメに会いにきたのか。それとも先生に会いにきたのか。


……今はカメと言っておく。



――ガチャ。 


401号室の前に着いてすぐにドアがゆっくりと開いた。




「ずいぶん時間がかかったな」


……家の中から先生が出迎えてくれるなんて変な感覚。それで、なんだかちょっと悪いことをしてる気分にもなってる。



 
「暑かっただろ。入れよ」


「……お邪魔します……」


私は借りてきた猫のように姿勢を低くして先生の家へと入った。




ここに向かっている途中で何回も先生の部屋を想像した。


数学準備室のように物が散乱しているんだろうな、とか。天井まで本が積み重なっていて足の踏み場がなかったりして、とか。


でも実際はきちんと片付けられている1LDKの綺麗な部屋だった。


意外すぎて、想像と違いすぎて、かなりビックリしてる。