……先生に恋?ありえない。
ただ、郁巳先生は私にないものをたくさん持っていて、色々な景色を見せてくれるから、すごいなって思ってるだけ。
先生の波長、先生の言葉、先生の導き方。
どれもこれもが眩しくて、キラキラしてて。やっぱりこれは憧れだと思う。
いや、そうじゃなきゃ、困る。
憧れじゃないのなら私は……。
急に黙り込んだ私を見て、先輩はなにも言わなかった。その代わりジャージのポケットからスマホを取り出して画面をタップする。
「ねえ、連絡先、交換しない?」
「……え?」
ぼんやりとしていた思考が一気に現実に戻ってきた。
「ほら、委員会のことで連絡することがあるかもしれないし」
たしかに体育祭では仕事がなかったけれど、これからの行事で風紀委員が動くこともあると思う。
「私、機械ベタなので返信とか遅いかもしれませんが……」
「はは。平気だよ。交換しよう」
柔らかく言われた声はスッと私の胸に入ってきて、気づけばなんの躊躇いもなく私もスマホを出していた。
〝和谷太一〟と表示された名前。
交換してすぐに【よろしくね】と可愛いスタンプ付きのメールがきた。
アラーム機能しか活用してなかったスマホが、どこか嬉しそうに見えたのは気のせいじゃない。



