同級生との付き合いも儘(まま)ならない私は、もちろん年上の人と接した経験が浅くて、先生の言動や仕草はすべて新しかった。
タバコを吸う横顔もそうだし、車に乗ってることも、お酒を飲むことも、なんでも見透かしているような瞳も全部ぜんぶ、惹き付けられる。
だから先生は近くて、遠い。
私には手の届かない大人の人。
「……先輩も年上の人に憧れたりしますか?」
「尊敬できる人はいても憧れはあんまりないかな。むしろ男は少ないんじゃない?どっちかっていうと年下好きのほうが多い気がするし」
「と、年下って何歳くらいまで……」
聞いたあとで、私はすぐに我に返った。
今のは違う。というか、先輩に対しての質問じゃない。
また心がグラグラと揺れてる。
ケヤキを揺らす薫風(くんぷう)よりも。
「……もしかして、年上の人に恋でもしてるの?」
「し、してません!してないです……っ!」
私は大袈裟なくらい必死で否定した。



