それから開会式とエール交換が終わって、全学年選抜の100メートル走がはじまった。
クラスメイトたちは側で応援しようと荷物だけを置いて席を立つ。私は椅子に座ったままでも競技は見えるので、ぽつりと二年一組の場所に留まっていた。
……郁巳先生、具合は大丈夫かな。
グラウンドは広くてたくさんの人たちが出入りしているので、先生の姿を見つけるのは難しい。
中央にあるテントでは進行や記録をしている生徒会や体育祭実行委員の人たちが忙しく動いていた。
おそらく先生もなんらかの補佐をしている頃だと思う。
私は先生が巻いてくれたハチマキをそっと触る。
自分の競技以外の時は外してもいいことになっているけれど、私は次の障害物競争がはじまっても、その次の騎馬戦がはじまってもハチマキを取らなかった。



