「きつくない?」
「へ、平気です……」
声が上擦りそうになってしまった。
先生と生徒の距離感が近いことは今に始まったことじゃない。でもこんな不意討ちをされたら大抵の女子は落ちる。
そういうことを先生はちっとも分かっていない。
また名前のない感情が押し寄せてくる。
どういう顔をしていたらいいのか分からずに私は少し不機嫌な態度をした。
「なんだよ?」
先生は本当に自覚がない。
でも、自覚なんて必要ない。だって先生にとってはただ生徒にハチマキを巻いてあげただけのこと。
過剰に気持ちを揺さぶられている私がおかしい。
「……別になんでもないです。もうすぐ開会式がはじまるので失礼します」
私は小さく頭を下げてドアへと向かう。
「的井」
背中越しで先生が私の名前を呼んだ。
「青春しろよ」
これは夢だろうか。なんだか聞いたことがあるセリフ。
あの時はたしか怒って返事をしなかった。でも今日は……。
「前向きに検討します」
「面接か」
具合が悪かったはずの先生がケラケラと笑っていた。
どんなにモヤモヤしていても、先生の笑顔を見ると許してしまう。
青春って、なんだろう。
青春ってなんですか?
先生にだけ揺れる感情も、青春に含まれますか?



