高校の体育祭は小学校、中学校と違って保護者の観覧は少ない。
一応、保護者席というものが用意されているけれど、数えるほどしか人はいないし、もちろんうちの両親は私に関心がないので今日も見送りすらされなかった。
そういえば、幼稚園の時にお母さんがお重箱でお弁当を作ってきたことがあった。
料理下手なお母さんが作ったお弁当は少し歪だったけれど、すごく嬉しかったことを今でも覚えてる。
そうやって特別なことがあると、記憶は鮮明にインプットされるようになっているのだと思う。
今日の体育祭はどうだろう。これから先、何年経っても忘れられないものになったりするのかな……。
――ガタッ。
私は自分の椅子を置いたあと、プログラムを机の上に置いたままだったことに気づいて教室に戻った。
誰もいない校舎と椅子だけがない教室はなんだか変な感じがした。
私はプログラムを見つけて、急いでグラウンドに戻ろうとした時、ふらりと一組に入ってくる人影が瞳に映った。
ドキッと、心臓が飛び跳ねたけれど、その人物の顔を見て私はすぐに冷静になる。
「郁巳先生、なにしてるんですか?」
先生の格好は赤色のTシャツにスウェットのズボン。それは寝起きのまま来たんじゃないかと疑うほどの軽装だった。



