「元気ないから、心配してたんだ。だから、笑ってくれてよかったと思って。」
 「………塚本さん。ありがとうございます。心配してくれて。」
 「日本にいる彼氏と、ケンカでもした?」


 塚本の言葉に、先ほどからドキリとされてしまう。自分が考えていることを見透かされているようだと千春は思った。
 けれど、また心配はかけないようにと、冷静を装おって返事を返した。


 「………彼氏なんていないですよ。それに、ただボーッとしちゃっただけで………疲れてるのかな?」
 「そうなんだ。いると思ってた。」
 「よくわからないんです。同じぐらいの時期にお互いに海外に行ってしまって。うやむやで2年過ごしてたら、もう付き合ってるかわからなくなってしまったんです。」
 「会ったりしてないの?」
 「………はい。」


 何故、塚本にこんな話をしてしまったのか。
 彼が話上手でもあり、そして秋文と雰囲気が似ているせいなのか、少し安心してしまうからかもしれない。
 塚本と話をしながら、秋文もこんな長い期間会わなかったことがなかった事に気づいた。
 だから、自分は弱っているのだろうか。


 「ずっと会えないのは寂しいよね。……でも、凹んでるの、一色選手の事かと一瞬思ったよ。そんなに好きだったんだーって。」
 「……?何の事ですか?」
 「え、世良さん、ニュース見てないの?」
 「……はい?」


 塚本の話していることがわからずに、首を傾げる。すると、スマホを操作してある日本のニュースサイトを見せてくれた。



 そこには『スペインの一式秋文選手熱愛発覚?お相手は現役モデル。』と写真と共に大きく書かれていた。一緒にいる写真ではなく、宣材写真であったが秋文とある綺麗なモデルの女性の写真が並んで載っていた。
 千春はそのモデルを見た瞬間に、ある事を思い出した。付き合う前に秋文の車の助手席に乗っていた女性だったのだ。



 写真を見つめたまま、千春は頭が真っ白になり、そして胸が激しく鼓動を鳴らし、気づくと瞳から涙が流れていた。