呆れられちゃったかな。

 だって帰ってしまったら、夢から醒めてしまう気がして。
 まだ離れたくなかった。

 例え、そのせいで昨日の二の舞になったとしても。

 車に乗っても無言の高宮課長に後悔が押し寄せる。
 馬鹿な発言をして楽しかった雰囲気まで台無しにしてしまった。

 窓の外の流れる景色を見ながら心を沈ませた。

 駐車場について高宮課長の方を仰ぎ見る。
 片手で口元を覆う彼は「待ってろ」と言い残して一人車を降りた。

 駐車場に入る前に『旅館』の文字が見えた。
 旅館って……もしかして………。

 ドキドキして待っていると高宮課長が戻ってきて前を見据えたまま口を開いた。

「夕食なし朝食付きの一部屋なら空いてるそうだ。」

「夕食は…もう食べましたし。」

「あぁ。」

 お泊り……するってこと?
 どうしよう。急に恥ずかしくなってきた。

「どうする?やめるか?
 今ならまだ間に合う。」

 どうせ高宮課長とは同じマンションに帰る。
 何を馬鹿なことをって思うのに、私は震える唇で答えた。

「……俊哉さんと離れたくありません。」

「……どうなっても知らないからな。」