そう思ってぐるりと柵の外を見てみても紺のジャケットの男性は高宮課長だけで、私の視線に気づいて軽く手を挙げた。
 恥ずかしくなってすぐに顔を背けると隣の女の子達はキャッキャ盛り上がっている。

「こっち見て、手を振らなかった?」

「まさか〜。
 娘ちゃんに振ったんでしょ〜。」

 やっぱり高宮課長のことなんだ。

 微笑んでたの?まさかまぼろしじゃない?
 聞いてみたいのに、高宮課長のツレがまさか自分だとは夢にも思っていないであろう隣の子達にはとても聞くことが出来ない。

 先に出て行く女の子達の姿が見えなくなるまでじっとその場で待ち続けた。
 だってなんだか色んな意味で居た堪れなかった。