1人で抱えることが出来なくて伊織課長の家にお邪魔していた。
 伊織課長というよりも正しくは愛梨さんになんだけど。

「騙した方がいいと言われたんですけど、結局は主導権はあっちです。」

 せっかくのアドバイスも生かせないまま。

 愛梨さんは微笑んで言う。

「ごめんね。
 一般的な恋愛について言ったのよ?
 結果オーライだからいいんだけど、俊哉くんにはストレートの方がいいかもね。」

 高宮課長にはストレートがいいだなんて……。

「どこがですか!全然ですよ……。」

「捻くれちゃってるからね。彼。」

 高宮課長のどの部分が捻くれてて、どの部分が真っ直ぐなのか。
 それさえも分からないくらい、彼のことを何も知らない。

「大丈夫よ。俊哉くんはこれでもかってくらい誠実な人だから。」

 そうなのかな……。
 誠実な人が酔った勢いで奥様と間違えて、あんなこと………。

 訝る視線を向けてみても愛梨さんは微笑むばかりだった。