「人が1人いないだけで家が広く感じますよね。
仕方ないですね。
一緒に住んで差し上げます。」
「何故、お前が上から目線。
で、何故泣く。」
溜息を吐かれて慌てて弁解する。
「違います。汗です。
イマドキの子は目から汗をかけるんです。」
「今度はおじさん扱いかよ。」
「何か言いました?」
「いいや。汗っかきで大変なこった。」
「そうですよ。大変で。
広いアパートで彼ともうすぐ一緒に住めるねって。
だから一人暮らしのアパートは解約して今月末にはもう………。」
「支離滅裂。」
広いマンションは彼との新居を思わせた。
もう何日も流しているのに涙は枯れてくれないどころか涙腺は壊れているみたいだ。
高宮課長はドアの上枠に手をかけて気怠げにしているのが、なんとも様になっていて鼻に付く。

