愛梨さんはチャーミングな顔で悪戯っぽく口にした。
「でも、その美味しいって言ってくれた白和え。
作ったのは藤花ちゃんよ?」
目を丸くした高宮課長は口元を手で覆った。
「材料は全て愛梨さんが用意してくださったものですし、料理する前にちゃんと手は綺麗に洗いました。
それでもご心配でしたら胃薬でももらってください。」
騙し討ちした私達も悪かったかもしれないけど。
愛梨さんが作ってないって分かったからってショックな顔をしないで欲しい。
「意外だな。
人間、1つくらい得意なものがあるんだな。」
「………はい?」
至極、真面目な顔で感心したように言う高宮課長に不満な声が漏れた。
「仕事を頼めばミスばかりだろ。
皿を洗ってくれると言われてもいつ家中の皿が全部無くなるかって内心ヒヤヒヤしてた。」
「高宮課長!ものすごく失礼です!!
お皿くらい私にだって洗えます!」
「あぁ。そうみたいだな。
生活能力は割と悪くないみたいだ。」

