「リビングに行くか?
 一緒に映画でも……。」

 首を左右に振って高宮課長と握る手にギュッと力を込める。

「ったく。よく今まで無事だったよな。
 危なっかしくて……。」

 トットットッと歩み寄って高宮課長に抱きついた。

「高宮課長だけです。
 触れたいのも、こうして側にいたいのも。」

「あ、あぁ。うん。」

 ギュッーと抱きついて顔を上げると照れ臭くて「えへへ」と笑った。

「ったく。
 先に謝っとく。箍外れたらごめん。」

「え?なんのことですか?」

「いや、こっちの話。」

 呆れたような諦めたような顔の高宮課長が鼻に噛み付いて「イタッ」と声が出た。
 フッと悪い笑いを吐いた高宮課長と目が合って、2人で吹き出して笑った。

 春はもう目の前で、甘い甘い日々を過ごすことになりそうな予感がしていた。


 ーFin