『それに藤花ちゃんは知らないだろうけど。
 藤花ちゃんに気を遣わせない為にベッドなんかを先に用意してたんだよ。
 泣かせるだろ?あいつ何気ない顔して部屋を貸したんじゃない?』

「え……。伊織課長が独身の頃、泊まりに来るからそれ用のベッドだって……。」

『そんなわけないよ。
 男の為にベッドなんか用意してたら気持ち悪い。
 本人が最初から気づいてたかどうかは別にして、そのくらい藤花ちゃんのこと大切に思ってたってこと。』

 そう……なんだ。
 今さらながらに知らないところでたくさん助けてもらっていたことを知った。

『俊哉はさ。
 前の彼女で失敗したから、変に前の彼女と重ねちゃったりして考え過ぎてたんだよ。
 実際、前の彼女と藤花ちゃんが変な関係性にあったからね。』

 それは、高宮課長からも聞いた話だ。

『藤花ちゃんのこと大切に思ってる。
 それだけは信じてやって。
 俊哉と出会ったのはどういう出会いであれ、きっとそれは出会う運命だったんだよ。』

 優しく言われて電話は切られた。