マンションのドアを開けてギクリとする。
 玄関に靴が一足。

「おう。お帰り。」

「ただいま、戻り、ました。」

 高宮課長は確か今日は外でお客様との打ち合わせ。
 そのまま直帰となっていた。
 いつも忙しそうな高宮課長が私より先に帰っているなんて………。

「あ、あの。」

「何をぼやっとしてる。
 コートを脱いで荷物も置いてこい。」

 高宮課長の視線の先には私が手にしている旅行鞄。
 自分が今まで一人暮らししていたアパートへ荷物を取りに行ってからここに来た。

 高宮課長の家に住まわせてもらうことをすんなり受け入れている自分がどこかおかしくて、いつかお腹を抱えて大笑いするんだと思う。