電話が鳴って携帯を見たまま出ない私を高宮課長はどう思っただろうか。

 元婚約者からだって気づいて、引き止めて欲しいような……。
 けれど良かったなって祝福されそうな気もして答えを知るのが怖い。

 高速を走っていた車はパーキングへと入って停車された。

「何か、買ってきますか?
 コーヒーか、それともガム?」

 取り繕うように話しかけた私の手を高宮課長は何も言わずに引っ張って抱き寄せた。

 きつく抱き締められて、それから頬へキスをしてから首元にもキスをされた。
 唇を重ねた場所が熱くて吐息が漏れる。

 唇を離した高宮課長がキスを落とした場所に舌を這わせた。
 ゾクゾクと背中に甘い疼きが走る。

 どうして、こんなこと……。
 昨日の夜よりなんだか妖艶で、、。

 体を離した高宮課長は何も言わずに車から降りて行ってしまった。
 残された私はキスされた首元を押さえて、ただただ熱くなる顔を俯かせた。

 戻ってきた高宮課長は変わらず何も言わない。

 なんだったんだろう。さっきのは。
 分からないまま、無言の車に揺られてマンションへと帰っていった。