朝が来て隣を見ると誰もいなかった。
 高宮課長は知らぬ間に起きていたみたいだ。

 布団の中で顔を見合わせて「おはよ」って言うようなそんな甘い雰囲気はなく、どちらかといえばマンションで過ごすみたいなただの同居人みたいな間柄に戻ってしまったように感じた。

 一緒にいても夢から醒めてしまった。
 嘘が、バレてしまったから。

 でも、もらってやるって……どういう意味だろう。
 私が新しい恋が出来るようになる、それさえも次へのステップだと言いたいのかな。

 釈然としないまま、旅館を後にした。

 帰りの車に乗るとすぐに携帯が鳴った。
 何気なく見た携帯の画面に愕然として、画面を見続けることしか出来なかった。

 画面には『渡辺晴真』と表示されていて、元彼というか、元婚約者だ。

 今さら、どういうつもりで電話なんて……。

 高宮課長も隣にいて電話には気づいていると思う。
 けれど出ろとも出るなとも言わない。

 鳴り続けていた電話は諦めたのか鳴り止んでおとなしくなった。
 けれど私の気持ちはかき乱されたまま。