「……は?」

「そんなこともわからないのか」


マスターの言葉がむず痒い。


「お前からしてやれば」

「なにを」

「キス」

「っ、するわけないだろ」

「少なくとも乳牛だとは思ってないだろう? あの子のことは」

「……うるさいよ」


店を出ると雨が降り出していた。

アイツ傘持ってなかったよな。


「世話の焼けるやつだな」


微かに残された青葉の香りを頼りに

僕は青葉の元へ走った。