「知ってますけど!」


そうムキになられると萎えるなー。


「たとえば?」

「誕生日も。身長も、体重も、趣味も特技も。好きな教科だって、スポーツテストの結果だって」

「うーわ。気持ち悪いね」

「え……!?」

「実はストーカー?」

「違います! キョウヤ様のこと、これくらい知ってて当然です」


ああ、ファンクラブかなにかで共有されてるわけか。


「みんなと同じことしててどうするの」

「え?」

「本当の彼がどういう人間か。それを自分で見極めなよ」

「本当の……キョウヤ様?」

「その呼び方も、普通じゃない。同じ学校の、いち生徒として見てみたら。案外普通のやつかもよ」


少女が頭を横に振る。


「頭も良くて運動もできて。優しくてイケメンで。普通なわけないでしょ」

「あのさー。そいつを褒める場面がきたとして。君はそんなくだらないことを褒めるの? それを好きになった理由になんてしないよね?」

「どこが、くだらないんですか」

「いい? もてはやされるのに慣れてる人間からしたら『知ってるよ』で終わる。同じようなこと言ってくるファンの中の一人なんて記憶にも残らないだろう」

「そんな」

「抜け出すんだ。一日もはやく、その輪から」