「高くないですか。認識されるのに……五万って」
「じゃあ聞くけど。顔、覚えられてる?」
「いえ」
「名前なんてもっと知られてないよね?」
「……ハイ」
「自分だけの力で顔と名前を覚えてもらえる可能性。何%くらいありそう?」
「……まず。覚えてもらう機会がない」
「あーあ。破滅的だねえ。やっぱり一生ファンでいちゃう?」
「そんなあ」
「名前呼ばれたいよね。目があったら挨拶して欲しいよね」
王子に呼ばれたり挨拶される光景を頭に思い浮かべたのかニヤケる少女。
いやそういうのは帰ってから家で一人でやってくれないかな。
「両想いになるにはいくらかかるんですか」
「んー…」
言葉を濁す僕の返事を今か今かと待つ少女。
なんかしばきたくなってきた。
しばくってどこかの方言なんだっけ。
忘れちゃったなあ。
「一千万」
「ファッ!?」
なにその奇声。
「嫌なら恋を金でどうにかしようなんてこと考えなければいい」
「それ、は……」