カラン、と扉の鈴の音がなる。
その数秒前に足音に気づいたマスターがテーブルから足をおろしシャキンと背筋を伸ばした。
ほんと、これが同じ人間かよ。
「すみません。本日は、営業が――」
「え?……あ、終わりましたか!」
――青葉。
「ひとことだけ、イズモくんに伝言いいですか」
「ええ。あなたなら、ひとことと言わず。いくらでも羽を伸ばして行ってくださいね」
余計なこと言いやがって。
「返金して欲しくなった?」
「ちがうよ」
「君はもう僕のこと知ってるよね。金にならない話はしないよ」
「ありがとう」
「……え?」
礼を言われることなんてしたかな。
君から三万とっただけで。
その金も結局君にとって無駄金だったんでしょ?
「あなたのおかげで、気づけた」