「しかし」
コホン、と咳払いするとマスターは続けた。
「今日のお客様には『金が作れないならそのへんのオッサンにねだってみなよ。すぐに用意できるから』なんて鬼のようなこと、言わなかったですね」
「そんな揺さぶりが通用する相手なら、最初から、もっとふっかけてたさ」
「あの少女はそこまで『重度』ではなかったのですね?」
「そういうこと」
片想いにも、色々ある。
相手を想う時間、誰を想っているか、様々な要因で軽かったり重かったりする。
その重さと相手の懐具合で値段を設定している。
「どうして三万がギリギリだと判断できたのです?」
「青葉は公立高校の女学生で、身につけているものも高価ではなかった。それでも髪は綺麗にカットされ、前髪は緩く巻いてあった。メイクも派手ではないものの、施していた。つまり日頃から美容にかける程度の小遣いはもらってるんだ。一万だと安すぎる。五万までいくと手が出せない」
「恐れ入りました。さすが、ぼっちゃんの観察眼ですね」
「やめてよ。君でもこのくらいのことはわかるだろう?」
「さて。なんのことでしょうか」
ニコニコ笑って誤魔化すのがコイツのクセだ。


