奏多くんは、息が上がって俯く私の顔をグイッと顎を軽く掴んで上を向かせて…… 「また……… 呼んでくれないんですか?」 「えっ?」 「………奏多」 ボソッと小さく奏多くんが呟く。 ──────えっ、あっ! 今更ながら…… さっき、自分が呼び捨てで呼んでしまったことを思い出す。 さっきは──── みんなが奏多くんを呼び捨てで呼んでたから、 とっさに───── 呼び捨てで呼んじゃったけど…… 改めて、呼ぶとなると……… 奏多くんは、じっと子犬のような瞳をして、私に訴えかけてくる。