愛されし手乗りインコは街の動物病院から帰ってきた。

私はその時起きたので、インコに何があったのかは知らない。ただ妹が「全盲って言われた」と姉と話していたので、籠の中でパニックったかな?と推理した。誰も慌てて無かったので、その事に気づいたのは、晩だった。インコに「水をひっくりかえしてはダメだよ」と妹が言っていたので、まさかインコは体で籠の中の位置関係を覚えていないのか?と想ったのだ。「びしょびしょやん」って笑って言ってる妹達が、まさかその事に気づいていないのか?と気づき私は目眩を感じた。「ご飯全然食べないね」とも言ってたからだ。どうしよう、インコが餓死したら。私は手乗り文鳥を餓死でなくした経験があるので、タイムリミットをソレと同じに感じた。ブルーインパルスの妙技を見たり、ハリー・ポッターにきゃいきゃいしてる場合じゃないだろう。と私は目が見えていた大人の手乗り文鳥にひと粒づつ餌を嘴に運び食べさせた武勇伝を思い出しながら、今日全盲になったインコが位置関係を覚えてる筈もなく、妹に「お母さんとお父さんを見送ってくれてありがとう」を思っとけよと、布団をかぶっていた。泣けた。

その深夜、眠ってしまった私が薬を飲みに居間に行くとインコが「ぴゃあ」と鳴いた。
「お母さん、お腹すいた」と、言ってるのだと私は想い遺言を聞いた気で、無声で泣きわめいた。


だが、インコは生きていた。
現に生きている。
私は私の杞憂に呆れながらも、藤原道長は、やるなと夕べの、一千年目の満月に想った。
絶対王者、羽生の金メダルを、想った満月に。